太宰治 駆け込み訴え
太宰治の短編。
イエス・キリストとイスカリオテのユダの話。聖書を元に太宰の世界が広がります。
ユダが祭司長にキリストを売る話は有名ですが、その時のユダの二転三転と移り変わる心模様を表現しています。
何故キリストを売ったのか。
キリストに対する複雑に絡まる愛憎を鮮明に描写しており、集中して一気に読破してしまうほどです。
冒頭の「申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は酷い。酷い」とまさに祭司長のもとへ駆け込んでいき、息せき切って訴える口調で話が進みます。
「圧巻」この言葉がピッタリです。
本の最後に解説ってよくありますよね。
それによると、この駆け込み訴えは夫人に対して、よどみなく一気に口述し、それを夫人が書き留めたそうです。
天才としか言えません。
太宰治は、斜陽や人間失格のイメージが強いですが、私は短編のこういった作品も好きです。
とても短いものですから、興味があればぜひ。