らんままの気まぐれ独り言

LUNASEA、長澤知之が大好きな女の独り言です。時々太宰治が登場。

「回想の太宰治」を読んで 

著:津島 美知子

太宰治の奥様です。


本の内容紹介の一部抜粋
太宰治は、文字通り文学のために生まれ、文学のために育ち、文学のために生きた「文学の寵児」だった。
彼から文学を取り除くと、そこには嬰児のようなおとなが途方に暮れて立ちつくす姿があった。


今回は、単純にこの本を読んだ感想を書こうと思っているので、
太宰治の細かいエピソードや、山崎富栄と太田静子についてはまた別で書こうと考えています。

 

お見合い結婚をし、美知子さんが伴侶となってからの太宰は、
心と体の平穏を取り戻し、意欲的に創作に励みます。
この頃の作品は、明るくユーモアに溢れた作品が多い印象。
ただその平穏も長くは続かないのですが…。


この本を読んだ感想。


まずは、美知子さんの文才に驚きました。
元々教師をされたいたので、それまでも様々なエピソードを聞いて、
賢い方だなと思ってはいました。

 

文章から聡明さや芯の強さが伝わってくる。

 

太宰はいつまでもお坊ちゃんで、自主的に動かず人任せなことが多い。
デパートで自分の服を買っても、婦人服売り場は足早に過ぎ去り、奥さんの物を買ってあげたりしない。
自分の酒代、煙草代には湯水のように金を使うが、妻が家財道具などを買ってくることは嫌った。

 

常に主観的に物事を捉え、また大袈裟にする。
それを例えた一文が「針で刺されたのを鉄棒で殴られたと騒ぐ人だった」とある。

 

美知子さんが他の小説家や画家などの芸術家を褒めたり作品を飾ると、
あからさまに不機嫌になり拗ね、作品を人にあげてしまったりする。


いつでも自分が一番愛されていたい。
常に愛に飢え、愛を求めていた人だったんだろう。
太宰の性格については幼少期の環境が大いに影響あると考えるが、

ここでは割愛します。

 

戦前、戦中、戦後という時代背景もあるが、酷い夫で妻は苦労しただろう。
でも美知子さんは冷静に、客観的に、観察するように、淡々と太宰治を語ります。

 

小説家としての「太宰治」を尊敬はしているけれど、
一人の人間「津島修治」に対しては呆れてたと思う。

 

呆れながらも、妻として凛とした態度で添い遂げようという意思、
太宰の妻としての誇りを持ってらっしゃたように感じた。
きっと憎みきれない良いところもあったんだろう。

 

また私が、この「回想の太宰治」という本の中でとても印象強く残ったのは、
太宰と共に情死した、山崎富栄という女性に対して一切触れていないということでした。

 

山崎富栄のやの字も出てこない。


太宰の死についても、「死んだ」という事実のみを記し、
いつ、誰と、何処で、どういう風になどの説明は無い。

 

それは同じく太宰と関係を持ち、斜陽のモデルとなった

太田静子に対しても同じだった。


静子は太宰の子を産み、妻として耐え難い苦痛を受けていたはずなのに。

 

哀しみ、怒り、憎しみ、嫉妬、言葉では表現出来ないであろう様々な感情が

あっただろうに、美知子さんは妻としてのプライドを強く持ち、

太宰の女性関係については生涯沈黙を貫かれました。

 

私が本を読んで一番印象に残ったのは「本に書かれていないこと」だった。


太宰に対する不平不満、怒りの感情などを感じ取ることはなく、
冷静に太宰にまつわる話を語っている。
私だったら恨み辛みをぶちまけてしまうだろう…。

 

小説を読むだけでは見えてこなかった、太宰のことを知れて良かった。
客観的に語られているところがわかりやすい。

 

今度は津島美知子さんについて詳しく知りたいと思い、堂々巡りになりそうです。