らんままの気まぐれ独り言

LUNASEA、長澤知之が大好きな女の独り言です。時々太宰治が登場。

走れメロス 太宰治

「メロスは激怒した。」

この冒頭部分はあまりにも有名です。
小学校か中学校の国語の教科書に載っていて、当時は何気なく読んでいたけど、
この頃は太宰に対して健全なイメージしか持ってませんでした。他の作品読んでないからね。
結果、他の作品読んでハマったんだけど。それは置いといて。


とにかくこのメロス、突っ込み所満載で面白い(笑)
村の牧人であるメロスは、妹の結婚式の支度のために市へ買い物に出かけるが、町の様子がおかしい。
道行く人に理由を尋ねると、王様が人を殺すという答えが返ってきた。

するとメロスは「呆れた王だ。生かして置けぬ」なんて言ってスタスタ王城に入って行くんだから驚く。
待て待て、メロス。いきなり行ったら捕まるよ。そもそも一般人が簡単に城に入れるんかい?

心配通りにメロスは取り押さえられるわけですが、またまた余計なことを言ってしまいます。
「市を暴君の手から救うのだ。」
そりゃ王を怒らせるよー。

そしてあれよあれよという間に、メロスは処刑される流れになっちゃう。

妹の結婚式があるから三日待ってほしい→人質を置いておく→三日後に帰ってきます→
村に帰り妹の結婚式を行う→市に向けて出発→疲労困憊の中、どうでもいいやと魔が差す→
気を取り直し再出発→ギリギリセーフで間に合う

ものすっごい省略すると流れはこんな感じ。
展開が速くって、まさに駆け抜けるように物語が進む。


メロスは人間そのものだ。
正義を叫んでいても、窮地に立つと自分が可愛くて守りに入ってしまう。
途中、身体的な疲労と共に精神的にも追い詰められたメロスは「どうでもいいや」と開き直ってしまうんです。

欺くつもりなど微塵もなかった!私はここまで必死に走ってきたのだ!許せ友よ!
つまり言い訳しちゃうんです。出来ない事に対して、自分はこれだけ頑張ったんだから評価してよと。

気を取り戻し、再び走り出す姿にホッとした。
それは綺麗事であろうと偽善であろうと、自分自身が出来る出来ないは置いといて、
人は倫理的な判断に安心するのだろう。

何故気を取り戻したのか。そのまま時が過ぎれば自分の命は助かる。友を見殺しにして…。

その時のメロスは命がどうこうではなく、信頼に報いる、これ一点だったのではないか。
人に信頼されている。このことが彼のバイタリティとなり勇気となり走らせていたのかもしれない。

とにかく熱い男、メロス。私が特に「メロス、暑苦しいよっ!」と思った一文は、疲れに疲れて立ち止まり
言い訳しちゃってるところでの言葉。
「私は精一ぱいに努めて来たのだ。ああ、できる事なら私の胸を截ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。
愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。」

わかった!わかったから!いいから頑張って走りなさい!いけるいける!と心のなかで急かしていました(笑)

でもそうやって駄目な自分をさらけ出しハッキリ言い訳しちゃうところ、
どうでもいいやと開き直っちゃうところ、人間だよね。あるある。

しかしこの場合はかなり深刻。友の命がかかってるのよ!走れ!メロス!

もちろん間に合い、友の命もメロスの命も助かって良かった~と胸を撫で下ろしました。

スピード感のある話で、暑苦しいぐらい、正義!友よ!がオンパレードですが、
話にのめり込んでメロス頑張れ!と応援したくなります。


省略して書くと、めでたしめでたしってな感じですが、内容は濃い。
無駄な説明や余計な装飾がない。必要最小限の文でまとまっていて、さすがだな~と思いました。